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企画展示室
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住民の避難誘導はあらかた済んだ。
今は視線の先にいる巨神をどうにかしなければ。
しかしいくら攻撃しても巨神の動きは止まらず、更に『ウラガワの自分達』が妨害を仕掛けてくる。
(もっとも、向こうの自分はこちら側の自分から逃げているつもりらしく、ひたすら逃げ撃ちを繰り返しているのみだが)
さて、どうしたものか。

「もー!うっとおしい!ネージュ、先にウラガワのオレ達をどうにかしようぜ!」
「…そうですね、こう邪魔をされては巨神をどうこうするどころではありませんからね」







「…っ!!またお前達ですか!もう何度も来ないでと言っているのに!どうしてしつこく追い駆けてくるんですか!!」
「それはこっちのセリフだぜ!何度もオレ達の前に出てきては邪魔してさ!」

向こうのネージュとこちらのドットが口論になる。向こう側のドットはどうでもよさげに笑いながら「とりあえずこいつらを引きとめようぜ」と言っては向こうのネージュに拒絶されている。

「あなた方に恨みはありませんが、任務の邪魔です、私達の前からどいてもらいます」

ドットくん、と声をかけると同時に目配せをし、ツインソウルをする。
向こうのドットもツインソウルを持ちかけるが、相変わらず向こうのネージュは拒否したままだ。
ちぐはぐなチームワークの隙を突いて、二人はウラガワの自分達に攻撃を仕掛ける。

「いまだ!」

そう言い放ったドットの電撃を纏った体当たりが向こう側のネージュの鳩尾にヒットする。
向こう側のドットがそれに気を取られた隙に、ネージュは向こう側のドットをれいとうビームで足止めする。

その場にうずくまる向こう側のネージュに、こちら側のネージュが歩みを進める。

「ひっ!」
「いい加減諦めて下さいませんか?私達はあの巨神を食い止めなければならないのです。あなた達に足止めされては困るんです」
「こ、来ないで!近寄らないで!だいたいお前達はあんな巨神を止められると思っているのですか!?」

向こう側のネージュの表情には恐怖が混じり、威嚇するかのように冷凍ビームを放ってくる。
しかしこちら側のネージュはそれを氷のバリアで受け止め、一歩また一歩と近づく。

「来ないで!来ないでと言っているでしょう!!」
「あなたは何故そんなにおびえているのですか?」
「何って…得体の知れない、よく分からないものが恐ろしいのは当たり前でしょう!?自分と同じ顔をした何かも、自分と全く違う姿の異界人も!!」
「えぇ、えぇ、そうですね。確かに、自分にとって未知の存在は恐ろしいものかもしれませんよね」
「なっ…!?」

向こう側のネージュはどうしてと言いたげな表情でこちらを見る。
その様に思わず向こう側のドットは声を荒げる。

「おいネージュ、こんな奴の説教なんか聞くことねーよ、無視無視!!」

それを聞いたこちら側のドットは向こう側のドットに攻撃をしかける。

「今ネージュ達が話してるんだから邪魔しないで!」
「おっ、じゃあオレ達はオレ達でやり合おうか!?」
「やってやらぁ!ネージュは続けてて!!」

ありがとう、とネージュはドットに視線を送り、向こう側のネージュに再び向き直る。

「恐ろしいですよね。怖いですよね。『分からない』物は怖いですよね。私も、得体の知れない、どこから来たのかも分からない、あの巨神がとても怖いです」
「そうでしょう!?そうでしょう!?恐ろしいから退けようと、お前達はあの巨神を攻撃するのでしょう!?」
「いいえ、私が真に恐ろしいのは、私や私の大切な人たち、生まれ育ったこの国があの巨神によってどうなるか分からない事。私達はそんな未曾有の事態を防ぐためにあの巨神を食い止めようとしているのです」

それを聞いた向こう側のネージュは、信じられないといった顔でこちらを見る。

「そんな…!お前達にとって訳の分からないあの巨神に、自分と全く姿形の違う異界人と強力なんてして…それが、そんな理由で!?」
「えぇ。恐怖を乗り越えてでも守りたいものがありますから。それに、異界人は姿形こそ私達と異なれど、心も気持ちも存在するという点においては私達とそんなに違わないのではないのかと、少なくとも私はそう思っています」
「…!!」

向こう側のネージュが再び膝を付く。その顔には既に戦意は見られない。

「…あなたのその、自分と異なるものを恐れず信じ受け入れる心が、あなた達二人の強さなのですね…それに比べて私は…何もかもを恐ろしいと拒絶する私は、あなた達に敵いそうにありませんね…」

向こう側のネージュはうなだれる。そんな彼に、こちら側のネージュはそっと手を差し出す。



「恐怖を乗り越える事は簡単ではありません。ですが、きっと誰にでも出来ると思います、勿論あなたにも。まずは一歩を踏み出す勇気を出す事から…ねっ?」

「…ふふ、私の完敗ですね」

ふっと微笑んだ向こう側のネージュは、そう言い残すと霧散するかの様に消えていった。
…他の隊員から聞いたとおりだ。ウラガワの自分は負けを認めるとその場で消えていく。

「…私も、自分と違うものを受け入れられずにいたら、向こう側の私のようになっていたでしょうね…」

一人呟くネージュ。その耳に向こう側のドットのばつの悪そうな声が聞こえてくる。

「ちぇっ!ネージュが消えて2対1になっちまった!こいつは分が悪いや!」

そう言って向こう側のドットは走り去って言った。

「ネージュ!アイツ追い駆けよう!懲らしめてやろうよ!」
「まってドットくん!ハンコに通信が…」

通信でノチウから聞かされたのはこの国の成り立ち、真実、そしてレンテ山へ向かい、遺跡を調査し『写鏡』を破壊せよという新たな指令であった。

「ドットくん、レンテ山へ行きましょう、向こうのドットくんは負けを認めたも同然。向こうの私と同様、そのうち消え去るでしょう」
「でもオレ、このままじゃ気がすまないよ!ちゃちゃっと済ませるからさ、アイツを懲らしめさせてよ!」

パートナーの可愛いわがままに、ネージュもふっと緊張が解け、微笑む。

「…分かりました、ちゃちゃっと済ませてレンテ山の遺跡に急ぎましょう!」
「うん!オレ達二人ならちょちょいのちょいだぜー!」

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お借りしました:
ドットくん@りゅーさん
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