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ヘルフストゥ首相演説護衛任務。
突然舞い込んできた任務ではあったが、進行は概ね順調であった。
首相に気を払いつつ、デモ隊を諌め、時折こけおどしに冷気で威嚇する。
その繰り返し。
不平を叫ぶ人々に力を振るうのは少々気が引けたが、かといって先住民異界人双方を想う首相を危険に晒すわけにも行かない。
この演説で少しでも首相の意が人々に届くとよいのだが…
そんな事を考えながら任務にあたっていた。







「ネージュ、危ない!」

「!」

パートナーの声に振り向くと、デモ隊に紛れてこちらに向かってくる異界人の姿があった。
狙いは自分達だ、しかし任務の遂行とパートナーの安全を考えるとこちらも見過ごす事はできない。
冷気のバリアを集中させて攻撃を防ぎ、そのまま冷気を盾から矛へ転じさせる。怪我をさせないよう、慎重に気を遣って。

「…手心を加える余裕があるとは、随分と舐められたモンだな、自衛軍さんよ」

「お願いします、ここは危ないから離れていて下さい。デモ隊の方々はあなた方異界人が優遇されてると不満を抱いているようですから、異界人のあなたがここにいては…」

「フン、俺達を虐げてきたガウォート王国の人間がそれを言うか」

「えっ」


そう言われて、ヒュっと息を呑んだ。

「お前のような王国の、自衛軍の人間に、俺達の何が分かる!故郷から突然引き離され、見知らぬ土地で、自分達と違うという理由で王国の人間に虐げられ、冷遇されてきた俺達の何が!!」

「わ…私は…」

言い返せなかった。違う、私は違う、と言いたかったが、言えなかった。
口にしてしまうことは酷く傲慢な気がしたから。

異界人と手を取り合い友達になりたい。きっと友達になれるはず。自分は能天気にそう思っていた。
先住民に虐げられる異界人の存在を知識では知っておきながら。
自分はどこか他人事のように、現実感の無い事象であるように感じていた。
そのような事をする人の存在が信じられなくて。
結果、自分は目の前の彼のような、この世界で苦しい思いをしてきた異界人の存在から目を逸らしていて。

そんな事も知らずに友達になりたいなど、自分はなんてお花畑のような考えだったのだろう。

「ネージュ!」

パートナーの声と共に空気中に電気が走りピリピリとする。
なおもこちらに攻撃を加えようとした異界人の動きを、ドットが電撃で麻痺させて止めたようだ。

「あんな奴のいう事なんて気にする事ないよ!あいつこそ俺らの事なんて分かってないもん!」

ドットが自分を励まそうとかけてくれる声も、今のネージュの心には届かなかった。

「いいんです、ドットくん…いいんです…」

「ネージュ…!」

「…いいんです…私は…」

気がつけばツインソウルは解け、ネージュはその場にへたり込んでいた。

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お借りしました:
ドットくん@りゅーさん
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